「全固体電池」を電気自動車(EV)などに向けて実用化する動きが加速し始めた。Dyson社はベンチャー企業を買収し、さらに量産技術の開発に1800億円を投資する。Apple社やBosch社、積水化学工業なども全固体電池やそれに準じた電池に大型投資を検討する。技術面でも、従来の全固体電池のイメージを大きく塗り替えるブレークスルーが相次いでいる。

 Liイオン2次電池(LIB)の電解質を液体材料から固体材料に変えた次世代LIBである「全固体電池」。その開発や実用化に世界の大企業が本腰を入れ始めた(図1)。米Apple社は2016年3月、全固体電池開発に携わる技術者の公募を始めた。同社は、電気自動車(EV)を数百人の技術者を率いて開発しているという噂が絶えない注1)

注1)例えば、開発プロジェクト名は「Project Titan」、EVの名称は「iCar」といった報道がある。
図1 蓄電池に1000億円単位の金が動き出した
図1 蓄電池に1000億円単位の金が動き出した
2015年9月以降の蓄電池やEVに対する新たな投資や研究開発、事業化の例を示した(a)。(b)はDyson社の全固体電池への投資額と、Tesla社などの大規模工場「Gigafactory」への投資額やFaraday Future社のEV関連の投資額との比較。Dyson社の投資額はGigafactoryについての総投資額の約1/3。GigafactoryへのTesla社以外の投資額は本誌推定。
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 これを半年遡る2015年9月には、車載部品メーカー大手のドイツBosch社が全固体電池の開発ベンチャーの米Seeo社を買収した。Seeo社は、2015年春時点でEV向け全固体電池の量産に最も近いメーカーの1社だった1)