DNNの学習や実行を高速化するハードウエアの開発がそこかしこで進んでいる。米NVIDIA社への一極集中を打破し、拡大する市場でのシェア奪取を目指す。クラウド側で学習を高速化する専用IC から、脳を模したチップまで、新たな提案が引きも切らない。

 2016年1月末までの会計年度の売上高は対前年度比7%増の50億1000万米ドルで過去最高。同日締めの第4四半期の売上高は同12%増の14億米ドルと、四半期での過去最高を記録した。半導体の世界市場が横ばいを続ける中、米NVIDIA社の好業績は目を引く。その要因として同社が強調するのが、ディープラーニング(深層学習)だ。CEOのJen-Hsun Huang氏は「深層学習は新たなコンピューティングモデル」と語り、パソコンの雄・米Intel社が従業員を削減し、スマホを制した米Qualcomm社が減収に陥る時代に、半導体の次のけん引役は自社だと言わんばかりである。実際、調査会社も今後の市場拡大を期待する(第1部の図2(b))注1)

注1)米Tractica社は、ディープラーニング関連ハードウエアの売上高は2024年に410億米ドル(1米ドル=106円換算で約4兆3500億円)を超えると見る。

 確かに深層学習の研究開発の現場では、今のところNVIDIA社のGPUが使われることがほとんどだ。米Facebook社は、2015年12月に発表したオープンソースのAI学習用ハードウエア「Big Sur」にNVIDIA社のGPUを採用。米Google社や米Microsot社、Preferred Networksなどが相次いで発表した深層学習用フレームワーク(第1部の表1参照)も同社のGPU上で動作する。NVIDIA社自身は、性能を大幅に高めた最新GPU「Tesla P100」や深層学習用スーパーコンピューター「DGX-1」を2016年4月に発表し、他社を引き離しにかかる。