16nm世代以降の製造プロセスで高性能のアナログ半導体を開発するための技術が相次ぎ登場している。従来のプレーナー型トランジスタに代わってFinFETが採用され、アナログ回路設計で従来とは異なる課題が出てきた。ノイズや課題解決には、デジタル回路の活用がカギとなる。アナログ回路を減らすとともに、デジタル補正技術を駆使する。

 アナログ半導体の開発は、現在、端境期にある。スマートフォン向けのSoCメーカーが、16nm以降の先端プロセスでアナログ回路を集積した半導体を市場に出し始めた。米Qualcomm社は10nmプロセス品を韓国Samsung Electronics社のラインで量産中である。一方、米Analog Devices社(ADI)、米Maxim Integrated社、米Texas Instruments社(TI)といったアナログ専業半導体メーカーは、28nm以前のプロセスで製品化している。いわば従来型のアナログ半導体開発を進めていると言える。それでもいずれはアナログ専業半導体メーカーも16nm世代以降のプロセスで製品化を始める可能性が高い。

 28nm以前に対して16nm以降の半導体が大きく異なるのはトランジスタにFinFETを採用している点だ。FinFETは、アナログ半導体設計を大きく変える注1)、注2)(「FinFETが変える28nm以降のアナログCMOS」参照)。

注1)従来のプレーナー型トランジスタを微細化すると、ソースとドレイン間の距離(チャネル長)が短くなって容量が増大、チャネル下にあってキャリアが存在するSi基板を介してパンチスルーと呼ばれる電流が流れやすくなっていた。短チャネル効果であり、オフ時のリーク電流が増えることになる。FinFETではチャネルをゲートで囲む構造を採る。プレーナー型でパンチスルー電流の通り道だったSi基板部分もゲートとなって、パンチスルー電流すなわちリーク電流が抑制される。

注2)FinFETと同様の効果を狙って20nm台の世代で導入されたFD-SOIは、Si基板のキャリアをなくして(完全空乏層化して)パンチスルー電流を抑制する技術である。伊仏合弁のSTMicroelectronics社などが28nmプロセスに適用している。アンプなどアナログ半導体開発にとって有利な特性(例えば入出力インピーダンス)を備える。

 FinFETは、パソコン用のマイクロプロセッサーやスマートフォン用のアプリケーションプロセッサーの微細化を進めるため、16nm/14nm以降のすべての工場で導入された。デジタル回路のために導入されたが「アナログ回路設計にとってプレーナー型にはない長所と短所がある」(東京大学 大規模集積システム設計教育研究センター 准教授の高宮真氏)(図1)。

図1 16nm以降の先端プロセスでアナログICに新しい課題
図1 16nm以降の先端プロセスでアナログICに新しい課題
プレーナー型トランジスタに代わってFinFETが導入されている16nm以降のプロセスでアナログICを開発するときの影響をまとめた。課題の解決には、デジタルSoCメーカーが精力的に取り組んでいる。
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