事業と開発の手法が全く異なるアナログ半導体とデジタル半導体。これまで別々の道を歩んできた2つの業界が同じ土俵で競い始めた。微細化を突き進めるデジタル半導体メーカーが、アナログ回路を搭載するようになったからだ。16nm 以降のプロセス技術をアナログ回路にも適用、そのノウハウを蓄積してアナログ半導体メーカーを追い上げている。
アナログ半導体の開発で、アナログを専業としない半導体メーカーの存在感が増している。A-D変換器、D-A変換器などを集積したアナログ半導体を米Broadcom社、米Intel社、台湾MediaTek社、米Xilinx社などが最先端プロセスで開発し、米Analog Devices社(ADI)、米Maxim Integrated社、米Texas Instruments社(TI)に代表されるアナログ専業半導体メーカーに匹敵あるいは凌駕する性能をこの1年ほどの間に相次ぎ学会発表している(図1)。
いずれも16nm世代プロセスによるFinFETを使って、S/N(信号対雑音比)などの性能を維持しつつ、消費電力を下げているのが特徴だ。アナログ専業半導体メーカーが、自社製品の量産に最適と見るのが「28nm世代まで」(ADIのSenior Vice President & CTOのPeter Real氏)と見るのとは対照的に、前述のアナログ専業ではない半導体メーカーは、デジタル半導体向けの先端プロセスを貪欲に取り入れている。
これまでアナログ専業半導体メーカーは、デジタル半導体よりも何世代か遅れた“枯れた”半導体プロセスを使い、回路設計や独自プロセスによる技術力で、高付加価値の半導体を提供してきた。出荷数量が少ない産業機器市場もカバーし、スマートフォンをはじめとする民生機器市場向けのASSP(特定用途で広く使われる半導体)や高付加価値で応用範囲が広いFPGAなどを手掛けるデジタル半導体メーカーとは、事業や開発のスタイルを異としている。