耳に装着するTWSイヤホンはヒアラブル端末の中でも、実装のハードルが高い。代表的な数製品を分解したところ、その“先達”ともいえる補聴器向け部品や通信技術を利用する工夫が目立った。今後の高機能化へのいくつかの課題も見えてきた。
ヒアラブル端末、特に完全ワイヤレスステレオ(TWS)イヤホンは、1辺2cm前後で数gと非常に限られた寸法と重さの超小型コンピューターといえる(図1)。中には、32ビット84MHz動作と比較的高性能なマイコンや4Gバイトの大容量メモリーを実装した製品もある。超小型の筐体に多くの機能を、高い信頼性を確保しながら実装するのは、さまざまなエレクトロニクス機器を手掛けてきたメーカーにとっても、設計力が問われる難問だ。
実装上の大きな課題は、(1)小型化と多機能化や電池の大容量化の両立、(2)左右のイヤホン間の無線通信をどう実現するか、(3)収納兼充電器とイヤホン間の電気的接触の安定的な確保の3つである(図2)。
(1)の解決策は第2部で紹介したように、1つのセンサーを複数の用途で利用することが基本となる。電池については、デザインを工夫して電池やアンテナのスペースを確保すると同時に、無線ICなどを独自設計して消費電力を減らし、電池の持ちを良くした例もある。米Apple社のAirPodsが代表例だ。
AirPodsは省電力性能が高い
AirPodsの電池容量は93mAh(表1)。音楽再生は連続5時間としているので、音楽再生時の消費電流は18.6mAとなる。一方、他社のTWSイヤホンは同25m~30mAでAirPodsの省電力ぶりが目立つ。Apple社がAirPodsなど向けに開発した省電力Bluetooth IC「W1」の効果といえそうだ。
韓国Samsung Electronics社の「Galaxy Gear IconX(IconX)」はBluetooth経由の音楽連続再生は約1.6時間で、同29.4mAと省電力性能は低い。ただし、IconXに実装した4Gバイトのメモリーから音楽を再生する場合は、連続3.8時間利用でき、同12.4mAとAirPodsより低消費電力だ。