世界市場で戦える高級車ブランドに昇格すべく、レクサスが動き始めた。2017年は「LC」と「LS」という二つの新モデルを用意し、歴史の1ページ目を記す。“ジャーマン3”の背中を追うのをやめ、目指すのは唯一無二の存在だ。新ハイブリッド機構は走りと環境を両立させ、内装には日本の美が宿っていた。

 高級車市場において、日本メーカーの存在感は薄い。品質が高く壊れにくい大衆車を造るのは得意だが、“プレミアム感”を演出するには、品質だけでは圧倒的に物足りないのだ。

 例えば、日産自動車が海外向け高級車ブランドとして位置付けるInfinitiの2016年の世界販売台数は約23万台。ドイツDaimler社のMercedes-Benzに比べると1/10ほどに過ぎない。

 台数以上に問題なのは、ブランド独自の個性を確立できていないことだ。「スカイライン」を見ると分かりやすい。日産ブランドのセダンでありながら、フロントグリルに鎮座するエンブレムはInfinitiのものなのだ。スカイラインは海外では、Infinitiの「Q50」として販売されている。「Q50をそのまま日本に持ち込んで、名前とエンブレムだけを変えただけ」──。消費者にはこう映ってしまう。

 ホンダのAcuraも似たようなものだ。スポーツカー「NSX」は日本ではホンダ、北米など海外ではAcuraのブランドとして売られている。つまり、ブランドとして訴求したい世界観やメッセージが定まっていない。立ち位置がぐらつく限り、世界市場で戦える高級車ブランドに昇格するのは難しいだろう。

 こうした日本メーカーの状況を打開しようと動き出したのが、トヨタ自動車のレクサスだ。レクサスは2017年に2台の新モデルを用意した。スポーツクーペ「レクサスLC」とセダン「レクサスLS」だ(図1)。いずれも“L”の名を冠するフラッグシップで、これらの投入をブランド変革の旗印にすると意気込む。

図1 新世代レクサスの象徴に
図1 新世代レクサスの象徴に
トヨタが2017年3月16日に発売した新型スポーツクーペ「レクサスLC」。ひと目で分かる“攻め”のデザインを採用した意欲作だ。
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