電動化や自動運転、サービス化の波が、高級車市場に押し寄せ始めた。この変化は、歴史と伝統に裏打ちされた強さを持つ“ジャーマン3”にとっても脅威だ。スウェーデンVolvo社やトヨタ自動車のレクサスは追い上げを狙う。米Tesla社など新興勢力も競争に加わる中で、ブランド力の強さが一層求められている。

 12年ぶりに首位を奪還した男は冗舌だった。「Mercedes-Benzの歴史の中で、2016年は最も成功した年となった。中国と欧州で堅調に成長し、先進的なデザインの新型車によって、高級車市場でトップに上り詰めた」──。

 「デトロイトモーターショー2017」の開幕を前日に控える2017年1月8日の夜、ドイツDaimler社は米国デトロイト市内で記者発表会を開催した。ステージに立った同社Chairman of theBoard of ManagementのDieter Zetsche氏は、興奮気味に手応えを口にした(図1)。Mercedes-Benzは、世界販売台数を5年で1.5倍に増やし、2016年は初めて200万台の壁を突破。そして、BMWを抜いて高級車ブランド市場で首位に立った(図2)。

図1 Daimler社「Mercedes-Benz」が世界高級車市場で12年ぶりに首位を奪取
図1 Daimler社「Mercedes-Benz」が世界高級車市場で12年ぶりに首位を奪取
(a)2016年の高級車の世界販売台数は「Mercedes-Benz」ブランドが約208万台を記録し、ライバルの「BMW」ブランドを抜いた。(b)SUV(スポーツ・ユーティリティー・ビークル)や小型車が成長をけん引した。
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図2 二極化する高級車市場
図2 二極化する高級車市場
安定した成長を見せる“ジャーマン3”の好調ぶりが目立つ。レクサスやVolvo社は、中堅グループからの飛び出しを狙う。成長株としての注目はTesla社。グラフはIHS Markit Automotiveのデータを基に作成した。2017年以降は予測。調査地域の関係で、自動車メーカーが発表した台数と一部異なる。
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