海外のソフトウエア会社が、3DプリンティングやComputational Designデザインに関してのツールの開発を進めている。そのようなツールを使った事例も見られるようになった。

金属プリンター造形物の変形を予測

 米MSC Software社は、金属3Dプリンターでの造形物の変形をシミュレーションにより予測するツール「Simufact AM(仮称)」を開発している(図1)。レーザービームで金属粉末を溶融・凝固させる方式(パウダーベッド方式)の3Dプリンターを対象とし、造形物の残留応力や変形量を計算する。早ければ2016年中にも製品化する。

図1 金属3Dプリンターでの造形品の変形を予測するソフト
図1 金属3Dプリンターでの造形品の変形を予測するソフト
造形品を切断したときに、内部残留応力によって生じる変形を予測した例(モデルは3次元)。
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 造形物が変形するのは、レーザービームによる金属粉末の溶融と凝固の過程で生じる残留応力のため。この現象は極めて局所的かつ瞬間的に生じ、例えば半径数十μm×深さ100μm以内の狭い領域において、ミリ秒単位の短時間で温度が融点以上に上昇し、0.1秒後には100℃以下に低下するという。このような現象に伴って発生するひずみを造形物の形状全体にわたって積み上げ、そこから残留応力や変形量を計算するアルゴリズムを開発している。熱解析と構造解析を連成させる方法よりも計算時間が短くて済むという。

 日本法人のMSCソフトウェア(本社東京)も開発に加わっており、既にこのアルゴリズムを非線形構造解析ツール「Marc」をベースに実装した試作ソフトを作成した。ここで得た知見を、米MSC Software社の中で加工シミュレーション・ツール「Simufact」を手掛ける部隊とやり取りし、共同で開発作業を進めている。