炭化ケイ素(以下、SiC)連続繊維は、航空機エンジンや火力発電用ガスタービン向け耐熱素材の主役になる──。

 2016年9月16日、日本カーボンと米General Electric社(以下、GE社)、フランスSafran社の3社合弁であるNGSアドバンストファイバー(富山県富山市)は、新工場の竣工式を開催した(図1)。約60億円を投資し、2016年中にSiC連続繊維の生産を開始。生産能力をこれまでの10倍の年間10tに拡大する。

図1 NGSアドバンストファイバーの新工場の竣工式
図1 NGSアドバンストファイバーの新工場の竣工式
2016年9月16日、日本カーボンと米General Electric社、フランスSafran社の幹部が集まって竣工式を開催した。
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 SiC連続繊維は、軽量で耐熱性が高いセラミック・マトリックス複合材(以下、CMC)に使われる素材。もともと日本カーボンが開発した技術で、これに目を付けたGE社とSafran社が加わり、2012年に3社合弁のNGSアドバンストファイバーを設立した。

図2 航空機エンジン「LEAP」
図2 航空機エンジン「LEAP」
GE社とSafran社の合弁会社のCFM International社が製造する。LEAPは欧州Airbus社の「A320neo」、米Boeing社の「737MAX」などの最新鋭機に搭載される。
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 CMCは、航空機エンジン向けで主流のニッケル(Ni)ベース超合金と比べて、質量を約1/3に減らせる一方、強度を2倍に、耐熱温度を20%向上できる「夢の素材」(GE社)だという。

 このCMCは、GE社とSafran社が製造する航空機エンジンや、GE社の火力発電用ガスタービン向けなどで、今後3~4年で採用が大幅に拡大する見込みだ。既にGE社とSafran社の合弁会社であるCFM International社が製造する新世代の航空機エンジン「LEAP」がSiC連続繊維を使うCMCを採用している(図2)。GE社が製造する「GE9X」というエンジンも同様にCMCを採用する。