「デジタルツイン(デジタルの双子)」という耳慣れない言葉が産業界で注目を集めている。

 デジタルツインとは、産業機器や工場などの物理的な世界を、リアルタイムで何が起きているのかを含めて、コンピューター上で再現するものを指す。物理的な機器や工場をそのままデジタル的にコピーした双子のようなものであるため、こう呼ばれる。

 現実の機器で何が起きているのかを瓜二つのデジタルのコピーで再現できるとさまざまなメリットが生じるからだ。

 例えば、ある部品の劣化がどの程度進んでいるのかを解析し、いつごろ交換する必要があるのかを事前に把握しやすくなる。また工場で動いている装置を止めずに、稼働条件を変えたらどのような影響が生じるのかを検証することができる。このため機器や工場の最適な運用方法を追求でき、稼働率の向上に役立つ。

 このデジタルツインを戦略的に推進するのが米General Electric社(以下、GE社)だ。同社が力を注ぐ「Industrial Internet(産業のインターネット)」に象徴される製造現場のIoT(Internet of Things)化における、中核技術の1つとして期待している。既に同社製の航空機エンジンや発電機器などへの適用を進めている(図1、図2)。

図1 航空機エンジンのデジタルツイン(イメージ)
図1 航空機エンジンのデジタルツイン(イメージ)
GE社の主力ビジネスの1つである航空機エンジン事業では、個々のエンジンの状態をリアルタイムで把握することで、保守業務を効率化。コスト削減につなげている。
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図2 風力発電タービンのデジタルツイン
図2 風力発電タービンのデジタルツイン
通常、1つの発電所に多数設置される風力発電用タービンは、同じエリアに設置されていても、地形などの影響などにより、それぞれの状態が異なり、適切なメンテナンスが稼働率向上のカギとなる。
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