デジタルデータを活用して生産の最適化を図る「ブリリアント・ファクトリー」の推進を掲げる米General Electric社(以下、GE社)。その頂点ともいうべき工場が、GEヘルスケア・ジャパンの日野工場だ。

 元来強みとしている標準化やカイゼンによるリーン生産を、デジタル化でさらに強くする取り組みが進む。「リーン(ムダの排除)が進んでいる工場であっても、デジタル技術でさらにカイゼンが加速する」(同社執行役員製造本部長工場長の森本淳氏)。ある製品では、デジタル化によって製造リードタイムを65%削減できたという。そうした活動が評価され、2016年度には世界にあるグループ全450工場の中から「ベスト・ブリリアント・ファクトリー」に輝いた*1

*1 日野工場は、GE 社がグローバルでブリリアント・ファクトリーのショーケース(モデル工場)に指定している7工場のうちの1つ。

部品カートのRFIDで工程進捗を管理

 日野工場は、CTスキャナーの基幹部品であるドーナツ状のガントリーや、そのモジュールであるディテクター(検出器)、超音波診断用プローブ、MRIなどの開発から製造、販売、保守までを手掛ける。「GEの中でカイゼンといえば日野」(同社製造本部Brilliant Factoryプロジェクトリーダーの田村咲耶氏)と言うほど、グループの中ではリーン生産の手本となっている1)、*2

*2 GE ヘルスケア・ジャパンは、1982 年に横河電機との合弁に端を発する。創業時からトヨタ生産方式の「カンバン」「標準作業」「平準化」を導入しており、もともとカイゼン活動によるリーン生産を重視してきた。GE社の他ビジネスのリーダーやマネジャーが世界27カ国から集まる「リーンアカデミー」も開催している。

 では、それをデジタル化で加速するとはどういうことか。例えば、CTガントリーの生産ラインでは、作業の着手・完了時間を自動で記録し、そのデータをクラウドにアップすることで、作業の進捗をリアルタイムで把握・分析できるようにした(図1)。

図1 CTスキャナーのガントリー生産ライン
図1 CTスキャナーのガントリー生産ライン
1m/hでゆっくりと動くムービングライン上で本体に部品を組み付けていく(a)。(b)はキッティングされた部品カート。部品は作業手順に沿って部品カートの左上から順番に取ればよいように並べてある。部品を置く向きも工夫しており、同じ部品でも取り付ける向きに応じて向きを変えて置いてある。これにより手順の間違いや、組み付けのミスや抜けを防止している。
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