5年近くも低空飛行を続けていたワイヤレス給電システムの市場が急激に拡大し始めた。ワイヤレス給電システムにとっての幾つかの課題が解消に向かい、利用環境が整ってきたことで、スマートフォンで付き始めた勢いが、パソコン、各種家電、産業機器、医療機器、そして電気自動車(EV)にまで広がる見通しが出てきた。

 電力を無線で供給する「ワイヤレス給電システム」の市場が急激に伸び始めた。

 日本で携帯電話機などに電磁誘導で充電する技術の機運が高まったのは10年前の2006年。同じ年に米Massachusetts Institute of Technology(MIT)の研究者が、磁界および電界の共鳴という現象を利用した無線給電技術を発表するなどしてワイヤレス給電技術への注目が一気に集まった。

 2008年末には、電磁誘導型を推進する業界団体のWireless Power Consortium(WPC)が発足。2010年8月には、その業界標準規格「Qi」が発行された。ところが、対応製品の数が増えても期待したほど市場は伸びず、数年間も低空飛行状態が続いたことで、撤退するメーカーも出てきていた。2015年になってその状況が大きく変わった。