Preferred Networks(PFN)は、深層学習(ディープラーニング)技術に基づく高度な認識や予測の機能を、幅広い分野のIoTシステムで利用可能にするソフトウエア基盤(プラットフォーム)の提供を始めた。その利点やソフトウエア構成、将来の展開を開発者が解説する。(本誌)

 我々はIoTシステムで深層学習を活用するためのソフトウエア基盤(プラットフォーム)「Deep Intelligence in-Motion(DIMo、ダイモ)」を開発した。センサーから時々刻々得られるストリームデータに深層学習を適用し、認識や予測を実行する部分に特化したプラットフォームである。標準プロトコルを経由して、どのようなIoTシステムとも連携できる。IoTシステムの開発者は、専用言語でデータの流れを指定するだけで、深層学習の詳細を知らなくても、その利点を享受できる(図1)。

図1 深層学習ソフトウエア基盤「DIMo」を提供
図1 深層学習ソフトウエア基盤「DIMo」を提供
DIMoは深層学習フレームワークやライブラリ、ツールなどから構成される。自社やパートナー企業と連携したシステム開発に利用してきた。一部は既にオープンソース化している。今回、コンピュータービジョンなどの特定分野向けに、汎用的なライブラリやツールをパッケージ化して提供を始めた。
[画像のクリックで拡大表示]

 深層学習の特長は大きく2つある。1つは、データを使った認識や予測の精度が従来手法と比べて格段に向上すること。例えば大規模データセット「ImageNet」の画像を1000種類のカテゴリーに分類するコンテストでは、2011年に25%超だった誤り率(上位5位までの予測に正解が含まれない率)が、2012年に深層学習が登場して16%まで劇的に改善し、2015年にはついに人間の誤り率に相当する約5%に並んで、今では最新の深層学習手法は人間よりも高い精度を達成できるとされている。

 もう1つは、認識や予測の機能の開発が容易になることだ。例えば画像認識では、人物の検知といった汎用性の高い機能であれば外部から入手可能だが、独自部品の認識などでは専用の特徴量やアルゴリズムの開発が必要になる。深層学習を使えば、データによる学習でその機能を開発できる。後述する異常検知のように、センサーからのデータを入力し続けるだけで学習が進む場合もある。

 DIMoは、もともと自社向けで、パートナー企業と協力したシステム開発用などに利用してきた(図1)。今回、そのうち汎用的に利用可能な部分を外部に有償で提供することを決めた。まずはコンピュータービジョンと異常検知の機能をパッケージ化して供与する。2016年12月に特定顧客向けに有償ベータ版の提供を始め、現在はRidge-i(リッジアイ)をはじめとするパートナー企業経由で販売している。後述するエッジ側の機能に、顧客の環境で学習する機能などを組み合わせて提供している。

 今後は電力需要の予測や、工場ライン等での映像を使った外観検査、深層強化学習を用いた制御の自動化のパッケージを提供する予定である。このほか、2017年夏には、当社が研究開発に使っている基盤を公開し、顧客が自社の研究開発や深層学習のアプリケーション開発に活用できるようにする計画だ。