イメージセンサーや画像処理技術、画像認識技術といったカメラ技術は、これまで人間の眼(視覚)を超えることを目標に進化してきた。今後は、撮影シーンや周囲の状況までを瞬時に把握できる、知性を備えたカメラ技術が開発の主戦場になる。けん引するのは、市場成長が著しい自動車やドローン、監視カメラ、産業用ロボットといった非民生分野だ。

 イメージセンサーの世界シェアで首位を独走するソニーグループが、2017年第1四半期に新たな事業部を立ち上げた。それが、監視カメラやドローン、産業用ロボットといった非民生分野におけるセンシング用途に向けたイメージセンサーを手掛ける、ソニーセミコンダクタソリューションズの「センシングソリューション事業部」である。

 これまでソニーは、スマートフォンやデジタルカメラといった民生機器向けイメージセンサーに注力し、高いシェアを誇ってきた。加えて2015年には、車載事業部を立ち上げて、車載カメラ向けのイメージセンサーにも力を入れている。例えば、2017年4月には、同年5月のサンプル出荷、2018年3月の量産を予定する第2世代製品を発表した(図1)。「LEDフリッカー」と呼ばれるちらつき現象の抑制と、広いダイナミックレンジを両立させた。今後のソニーの車載イメージセンサーの「基盤になる製品」(ソニーセミコンダクタソリューションズ 車載事業部 車載事業企画部 統括部長の北山尚一氏)と位置付ける。

図1 LEDフリッカーの抑制と広いダイナミックレンジを実現
図1 LEDフリッカーの抑制と広いダイナミックレンジを実現
ソニーグループは、車載向けイメージセンサーの第2世代品を開発した。特徴は、LEDフリッカーを抑制しつつ、HDRでダイナミックレンジ110dBを達成できること。加えて、感度も高く、0.1luxという暗い環境下でも撮影が可能とする。自動車の機能安全規格「ISO26262」の「ASIL-C」に対応する。自動車の前方カメラだけでなく、電子ミラー向けカメラへの採用を狙う。同ミラーに利用した場合、後方にある車両のヘッドランプを個別に識別できる水準だという。(写真:ソニー)
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 ここにきて新たに発足させたセンシングソリューション事業部は民生、車載に続く「もう1つ(第3)の柱」(同事業部 事業部長の吉原賢氏)に育てるために発足させた、ソニー“肝いり”の組織である。この事業部で開発するのは、距離や偏光、特徴量などを取得できる、これまでのイメージセンサーとは一線を画すものばかりだ(図2)。

図2 世界シェアトップのソニーがイメージセンサーの新たな用途開拓に本腰
図2 世界シェアトップのソニーがイメージセンサーの新たな用途開拓に本腰
イメージセンサーの金額ベースの世界シェアで首位のソニーグループは、同センサーの新たな用途開拓に向けて新たな事業部を2017年に立ち上げた。それとともに、従来よりも多様な情報を取得できるイメージセンサーを開発している。例えば、さまざまな偏光状態や波長の光を捉えられるイメージセンサー、距離画像センサー、高速なセンシングが可能な高速ビジョンチップなどである。(写真:左から2番目と3番目はソニー)
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