本連載では永久磁石同期モーターを中心にして解説を進めているが、永久磁石同期モーターは「直流モーター(ブラシ付きDCモーター)が三相になったもの」と捉えることができる。そこで今回は、永久磁石同期モーターの理解を容易化するために、ブラシ付きDCモーターの全体像を詳しく解説する。(本誌)

ブラシ付きDCモーターと等価回路

 ブラシ付きDCモーターの特性を考えるためにモーターの端子から内部を見た電気回路図を、図1に示した。構成要素としては大きく、巻き線のインダクタンス成分La、抵抗成分Ra、さらに巻き線が磁束の中を回転することによって発生する起電力KEωがある。この他にブラシの電圧降下VBRがあり、これはダイオード特性と見なすことができる。ブラシの電圧降下の影響は、モーター駆動電圧が高い場合は通常は無視できる。また、駆動電圧からあらかじめブラシの電圧降下を差し引いておいても良い。このため、インダクタンス、抵抗、起電力の3要素に関わる電圧の和を、モーターの端子電圧と見なすことができる。

起電力=磁場の中を巻き線が回転するとき、巻き線に誘導電圧が発生する。このときの電圧を起電力と呼ぶ。駆動電圧と同じ極性で電圧が発生するため、逆起電力と呼ばれることもある。

 このとき、モーター電流をiaとした場合に以下の式が成り立つ。ここでKEは起電力定数(Vs/rad)である。

 この式は、定常状態で電流が一定であればインダクタンスLaの端子間電圧は無視できるので、以下のように表すことができる。時間的に変動しない変数は大文字で、変動する場合は小文字で表記する。

 一方、発生トルクTは「トルク定数(Nm/A)×電流」、すなわちKT・iaである。モーターが発生したトルクTは、慣性モーメントJを加速するトルク、粘性制動係数Dによるトルク、負荷トルク(クーロン摩擦トルク)TLに使用され、次式で表現できる。