米国市場は、Trump政権の方針転換によって短期的に成長しそうだ。ただ恩恵があるのは米デトロイト3くらい。日系メーカーは政権の方針に合わせつつ、停滞局面を見据えた戦略を練る必要がある。 (本誌)

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 2017年の米国における新車販売台数は、少し減りそうだ。2016年に2年連続で過去最高の1755万台に達したが、2017年は1741万台にとどまると見込む(図1)。だが2018年には過去最高の水準に戻るだろう。完全雇用と言える状況と原油安の水準は続きそうだ。加えて、2017年1月に誕生したDonald Trump新政権による減税政策やインフラ投資などの効果が表れる。

図1 2018~2019年にTrump効果
図1 2018~2019年にTrump効果
2017年の新車販売台数は減少する見込みだが、大型減税などの上振れ効果が2018年から少しずつ見えてくる。デトロイト3が恩恵を受けるだろう。2016年までは実績値、2017年以降はIHS Markit Automotiveの予測値。
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 米国市場が見通しにくくなるのは、2020年以降である。米経済に暗雲が立ちこめて、自動車市場は停滞局面に入りそうだ。景気サイクルで建設需要が下がる局面に入る上、米連邦準備制度理事会(FRB)による段階的な利上げの影響が表れるだろう。

 さらにTrump政権が打ち出す保護主義的な貿易や通商政策、環境規制に関する新しい政策が具現化すると、米経済の不透明感が強くなる。中でも米国とカナダ、メキシコの間で関税をゼロにする北米自由貿易協定(NAFTA)を見直すことになれば影響は大きい。自動車業界にとって米国戦略の根幹が揺らぐ。

 中長期的に米国の販売は伸び悩む。日系自動車メーカーは、高級路線に徐々に移っていく戦略が重要になる。