日系メーカーの牙城であるASEAN市場。トヨタはダイハツと連携して、小型車から大型車まで高い競争力を実現する。日産自動車と三菱自動車の連合は、トヨタに次ぐ地位を狙う。ASEAN市場の今後を占う。 (本誌)

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 2013年から最近まで新車の販売台数が急減していたASEAN(東南アジア諸国連合)市場。今後は、年率4%の成長が期待できる有望な市場に返り咲く(図1)。中国や成熟市場の低迷が見込まれる中、ASEAN市場で80%のシェアを占める日系自動車メーカーにとって極めて重要な市場になっていく。

図1 順調に増えるASEANの新車販売
図1 順調に増えるASEANの新車販売
インドネシア・タイ・マレーシア・フィリピン・ベトナム・シンガポールの新車販売台数の合計値。カンボジアやブルネイ、ミャンマー、ラオスは含んでいない。2017年以降はIHS Markit Automotiveの予測値。
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 ASEANで圧倒的な存在感を示すトヨタ自動車グループの優位は、しばらく揺るがない。ASEANでは国によって売れる車種が異なる。ダイハツ工業を手中に収め、全方位で対応できるのはトヨタくらいだ。他は、力を注ぐ国と車種を取捨選択して臨む必要がある。

 トヨタに次いで有望なのは、日産自動車と三菱自動車のグループ。2社の提携効果が2018年以降に見えてくる。

 ASEAN各国は現在、自動車産業を軸に自国の経済を強化するため、積極的に自動車関連企業の誘致政策を進めている。多くはもくろみ通りには進んでいない中、先行してきたのがタイだ。

 同国は今後、大きく方針を転換する。これまでの低燃費のエコカーを重視する政策から、電動車両や車載電池に軸足を移す。ASEANの生産拠点は今後、タイに集中する傾向が強まりそうだ。