車両の速度や進行案内などの情報を、運転者の前方2mほど先に浮かんでいるように見せるHUD(ヘッド・アップ・ディスプレー)。運転中の視線移動を減らすことができるため、安全性を高められると普及が進む車載機器だ。
これまでドイツBMW社やドイツAudi社などの欧州メーカーが積極的に搭載車種を増やしてきた。これを追いかけるように、日本の自動車メーカーもHUD搭載車の開発を押し進める。
2017年2月にはスズキが「ワゴンR」で軽自動車に初めてHUDを搭載した。小型で安い軽自動車向けのHUDが開発されたことにより、今後搭載車種が大きく増える見通しだ。
「HUDの搭載は当たり前になりつつある。後れを取らないためにはHUDの搭載が不可欠だ」―。他社の攻勢に焦りを見せたのは三菱自動車の開発担当者。同社は2017年度内に発売予定の次期主力SUV(スポーツ・ユーティリティー・ビークル)の「エクリプス クロス」でHUDを搭載することを決めている。
HUDの勝者がHMIを制す
HUD搭載車の拡大を商機に、HUD開発メーカーの競争も激化している(図1)。現在、同市場で大きなシェアを握るのはインストルメントパネル(インパネ)に備わるメーターを手掛けるメーカーだ。日本精機やドイツContinental社、デンソーなどが代表格である。特に日本精機はHUDの世界市場で4割以上のシェアを握る。
速度や注意喚起などを表示するメーターを手掛けてきた各社は、HUD市場を他社に奪われまいと、表示が見やすく機能を高めたHUDの開発を進める。
一方で攻勢をかけるのはパナソニック、パイオニア、三菱電機などカー・ナビゲーション・システム(カーナビ)を扱うメーカーだ。
カーナビメーカーが開発に力を注ぐのは、クルマが搭載する各表示系のHMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)がすべてHUDに統合される可能性があるからだ。
メーターやカーナビなどに表示していた速度や進行案内、注意喚起などの情報はすべてHUDでも表示できる。いずれは従来のようなカーナビのハードウエアは不要になるかもしれない。