車両の電動化が進む中、車載機器のECU(電子制御ユニット)に組み込まれるソフトウエア(制御ソフト)の規模や複雑さが右肩上がりに増している。車両1台当たりの制御ソフトのコード行数は、現在では中規模銀行の基幹系(勘定系)システムと同等の規模である1500万~2000万行に膨れ上がった。さらに今後は、自動運転機能などの搭載が進むと1億行に達するとの試算もある。

 こうしたソフトの肥大化にともない、ソフトの機能追加や不具合修正を効率化する手段として有望視されているのが「OTA(Over The Air)」だ。無線ネットワークを使ってソフトを遠隔更新する技術である。多くの自動車メーカーがOTAの活用に向けて取り組んでいる。その中でも先行しているのが米Tesla社だ。電気自動車(EV)のソフトの機能追加や改善をOTAで積極的に行っている(図1)。同社は2016年11月に自動運転機能を強化した更新ソフト「ソフトウエア8.0」の配信を開始した。さらに2017年前半には、レベル5の完全自動運転機能をOTAで提供(2016年10月以降に生産したEVが対象)することも表明している。

図1 OTAに対応した米Tesla社のEV
図1 OTAに対応した米Tesla社のEV
自動運転ソフトの機能追加や改善などをOTAで行っている。
[画像のクリックで拡大表示]