前回に続き今回も、ドイツFraunhofer Institute of Optronics, System Technologies and Image Exploitation(フラウンホーファーIOSB)でインダストリー4.0(I4.0)のさまざまな取り組みに関わっているThomas Usländer氏のインタビューをお届けします。フラウンホーファーIOSBは、欧州最大の応用研究機関であるドイツFraunhofer Society(フラウンホーファー研究機構)の研究ユニットの1つです。前回は、I4.0におけるフラウンホーファー研究機構の役割、民間企業との関わり方、I4.0における「破壊的イノベーション」の重要性などに関する見解を伺いました。

 今回はI4.0の今後の見通しを中心に伺っています。その前に予備知識として、フラウンホーファーIOSBが推進しているI4.0の取り組みで筆者がユニークだと思うものを紹介します。それは、「Smart Factory Web(SFW)」と呼ばれる取り組みです。

 SFWは、従来よりも柔軟な生産ラインを持つ複数のスマート工場が、互いの生産能力や設備を融通し合えるように情報を共有し、受注に対して効率的に対応するための仕組みを、主にアーキテクチャーや技術の視点から検討するというものです。具体的には、生産工程において部分的に外部リソースを利用したいと考える企業などに対して、その要求を満たしていて利用可能な設備がどのスマート工場にあるのかという情報を渡します。

 これは、設備の利用側と提供側が出会うための場を提供する「生産サービスのマーケットプレイス」とも表現できます(図1)。本コラムではI4.0のアプリケーション・シナリオを紹介してきましたが、その1つに外部の生産設備を利用して柔軟な供給体制を構築する「Order Controlled Production(OCP)」がありました1、2)。SFWは、まさにOCPの一例といえます。

図1 Smart Factory Web(SFW)の概要
図1 Smart Factory Web(SFW)の概要
「生産サービスのマーケットプレイス」という将来のコンセプトを検証している。フラウンホーファーIOSBやKETIのモデルファクトリーが参加しており、その他の参加メンバーも募集している。(出所:フラウンホーファーIOSB、KETI)
[画像のクリックで拡大表示]