今回は、2017年3月に開催された2つのイベントから最新の動向を紹介します。1つはドイツ経済エネルギー省(BMWi)主催の「Digitising Manufacturing in the G20-Initiatives,Best Practices and Policy Approaches」(同月16~17日、ベルリン)というカンファレンスで(以下、ベルリン会議)、主要20カ国・地域(G20)のメンバー国が製造業のデジタル化について議論しました。もう1つは、世界最大級のIT見本市「CeBIT(ツェービット) 2017」(同月20~24日、ハノーバー)です。今回は日本がパートナー国だったこともあり、多くの日本企業が出展していました(図1)。さらに、2016年4月の国際産業技術見本市「Hannover Messe 2016」に続き、日独連携を加速させるための共同声明「ハノーバー宣言」も発表されました。

図1 「CeBIT 2017」の「ジャパン・パビリオン」
図1 「CeBIT 2017」の「ジャパン・パビリオン」
日本から118の企業・団体が参加した。
[画像のクリックで拡大表示]

 インダストリー4.0(以下、I4.0)の視点では、両イベントに共通のテーマが3つありました。1つめは、ここ数年にわたって注目され続けている産業用IoT(IIoT:Industrial Internet of Things)です。現在、IoTプラットフォームと呼ばれるものはおよそ数百あるといわれており、どれが勝ち残るのかに関心が集まっています。

 2つめは、ディープラーニングのような最先端の機械学習技術をはじめとする、人工知能(AI)の活用です。無数のIoT機器が生成するビッグデータを自動で処理するためにも、AIのような仕組みが重要な役割を果たすことになりそうです。ただし、その前提となるのは学習用の良質なビッグデータであることも忘れてはいけません。

 そして3つめは、データ主権(Data Sovereignty)の概念です。これはセキュリティーも関わってきますが、企業活動を通じてIoT機器などから生成される膨大かつ多様なデータを他者(取引先など)と共有する際、所有者の意図した利用方法・期間に限定してデータを共有できるようにしたいという要求があり、それを実現するにはどうすべきかという問題です。データ主権には法的側面と技術的側面がありますが、技術的側面に関してドイツではIndustrial Data Spaceという取り組みがあり、多くの研究機関や企業が参画しています。データ主権については、本コラムでも今後取り上げたいと思います。