データ流通市場が普及する環境が整ってきた。サービス事業者が現れ、異なる事業者間で相互にデータを交換するためのルール作りも始まった。普及すれば、IoT事業の在り方を大きく変えられる可能性がある。センサーが、無関係な事業者間で共有して使うシェア型となり、収益モデルにも影響するからだ。

 「(ばら撒かれた)センサーを複数の事業者がシェア(共有)する世界を作って、自社製品(ハードウエア)にこだわらない課題解決型事業を構築したい」(オムロン 技術・知財本部 IoT戦略推進プロジェクトリーダの竹林一氏)。データ流通市場の普及を見越して、将来のIoT(Internet of Things)事業モデルを見直そうとする動きが出てきた。

センサーを割り勘で設置

 オムロンが考えるシェア型の世界とは次のようなものだ。既存の多くのセンサーは、敷設者や所有者が特定目的のために使っている。オフィス内の温度センサーを空調機器向けに使うといった具合である。ここで温度センサーがデータ流通市場と連携していれば、温度データはオープンにできる。進入検知や火災検知に使いたい警備会社、ユーザーの生体データと組み合わせて血圧変化を見たい医療機関などが利用可能になる。

 センサー所有者は、データ提供の対価を見込んで、実質的な投資コストを抑えられるようになる。自らは使う予定がなくても、誰かが必要とするだろうと考えて、高性能かつ多様なセンサーを設置する可能性も出てくる。例えば、空調機器向けなら±0.5℃の精度で十分だが、±0.01℃の高精度品を設置し、温度変化による在室チェックなど別の応用にも適用できるようにする。あるいは温度以 外に湿度、気圧、CO2、画像、音声などを計測できる複合センサーを設置しておき、将来の応用に備える。こうなれば、センサーの設置コストを複数のユーザーで割り勘できることになり、多機能で高性能なセンサー製品の需要を押し上げる可能性がある。

 オムロンは、こうした「割り勘効果」が、民間向け事業だけではなく、防災や社会インフラ向けの監視に有効と見ている(「サービスも投資も協調の時代」参照)。

 同社は温度や湿度など多様なセンサーを搭載した複合センサーを販売しており、将来、複合センサーを多数ユーザー向け、多用途向けに展開できると期待する。