変速機によって電動車の走行性能を高める動きもある。トヨタはレクサス「LC500h」でスポーツカーとしてのHEVの可能性を追求する。プリウスPHVでは、変速機の改良で2モーターによるEV走行を可能にした。EVにも変速機を装備する試みも始まっている。
ハイブリッド車(HEV)が普及期を迎えた今、燃費性能だけでは電動車の差別化が難しくなりつつある。「燃費が良いのは当たり前」と考え、それ以外の付加価値を電動車に求めるユーザーが増えている。その付加価値の一つがクルマの走行性能だ。変速機の改良や工夫で走行性能を高めることにより、電動車の高付加価値化を目指す動きが活発化している。
こうした動きの最先端ともいえるのが、トヨタ自動車が2017年春に発売予定のレクサス「LC500h」に搭載されている「マルチステージハイブリッドシステム」だ。同社の2モーター式ハイブリッドシステム「THS(トヨタ・ハイブリッド・システム)」の電気式CVTに4速のステップATを組み合わせた変速機構である(図1)。
レクサスGS450hやLS600hに搭載されている従来の機構は、遊星歯車を使った2段式の減速機で走行用モーター「MG2」の駆動力だけを増幅していた。LC500hの新システムでは、この減速機の代わりに4速のステップATを配置。MG2とエンジンの合力をステップATに入力して駆動力を増幅する(図2)。
LC500hのプロトタイプは最高出力が220kW/6600rpm、最大トルクが348N・m/4900rpmのV型6気筒3.5Lエンジンと、最高出力が132kW、最大トルクが300N・mのMG2の合力を増幅する。システム全体の最高出力は264kWである。