完全自動運転車の頭脳を任されようとしている人工知能(AI)。ディープラーニングという強力な学習手法を得て、開発が一気に加速している。先行するGoogle社は既に成果を出し始めている。自動運転を司るAIの開発課題や、性能を左右する要素も見えてきた。

 Google社で完全自動運転車プロジェクトの責任者を務めるJohn Krafcik氏の言葉には、力強さがあった。「完全自動運転車はもうサイエンスフィクション(SF)ではなく、現実にここにある。どうやって実現したかって? 機械学習で(自動運転用のAIを)トレーニングしたんだ」。同社が2011年ごろから傾注してきたAI研究の成果が出つつあるという(図1)。

図1 2012年ごろからAI開発を本格化
図1 2012年ごろからAI開発を本格化
Google社の自動運転やAIの研究開発に関連する取り組みを整理した。AIが人間の能力を超える「技術的特異点(シンギュラリティー)」を提唱するRay Kurzweil氏を迎え入れた2012年ごろからAIの開発を強化している様子が分かる。
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 機械学習とは、大量のデータを入力してコンピューターを訓練し、人間のように認識や判断をできるようにするAIの中核技術だ。AIは、人間の脳の「ニューラルネットワーク(神経回路)」を参考にした構造のコンピューター上で実現するもの。Part1で述べたように、機械学習の一種であるディープラーニングの登場によって、従来手法と比べて格段に高い認識・判断の精度を、短期間で実現できるようになった(別掲記事参照)。

 同分野に強みを持つ東京大学発のベンチャーPreferred Networks(PFN)取締役副社長の岡野原大輔氏は「ディープラーニングは開発手法に大きな変革をもたらす。ハードウエアで実現しようとすると1~3年かかっていた(機能)が、ディープラーニングを使えば1週間を切れるようになった」と語る。Google社でディープラーニング技術の開発を担当するMike Schuster氏も、「重要なのはスピード感」と同調する。