他社にない高い成形技術を基に、欧州から外観デザインの感覚(センス)を取り込んでグローバル展開を図っている中小企業が東京大田区にある。樹脂成形メーカーの日進工業(本社東京)だ。高い技術力を備えた中小企業は日本に多いが、世界を相手にビジネスを展開する企業は少ない。これに対し、日進工業は従業員が22人と小規模ながら、欧州に拠点を設けて海外へと販路を広げる戦略を立てている。

「対象は欧州企業」

 現在、同社の製品の8割は自動車向けのドア関連部品である、ドアインサイドハンドルを含むレバー類だ。三菱自動車を除く日本メーカーの乗用車の他、いすゞ自動車や日野自動車のトラックにも採用されているという。ただし、こうした国内メーカー向けの自動車部品は全て旧来の成形技術で造ったものだ。技術に目新しい点はない。

 だが、同社には他社にない独自技術として、塗装を利用せずに金属のような光沢を放つ外観品質を実現する樹脂成形技術「塗装レスメタリック着色樹脂成形(以下、塗装レスメタリック成形)」がある(図)。ある展示会で日進工業がこの技術で成形した試作品を単に並べたところ、誰も関心を示さずに通り過ぎた。そこで「塗装レス」であることを明示する看板を掲げたら、どっと人が集まったという。つまり、来場者が塗装品だと勘違いするほどの高い外観品質だったというわけだ。

図 金属光沢を放つ樹脂製ドアインサイドハンドルのサンプル
図 金属光沢を放つ樹脂製ドアインサイドハンドルのサンプル
塗装レスメタリック成形で試作した。
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 加えて、経年劣化などによって塗装が剥げる心配がなく軽量化にも有利だ。何より、後工程で塗装せずに射出成形だけで部品を造れるため、塗装品よりもコストは下がる。従って、塗装レスメタリック成形への注目度は高い。