「Galaxy Note 7」の発火事故に関する調査報告から、1次リコール後に出荷した改良機種の電池セルには製造上の致命的なミスがあったことが明らかになった。発売直後に発火事故を招いた原因より深刻で、発火事故率も高かったと推測される。量産の立ち上げを急ぐ中、韓国Samsung Electronics社は新たな不良を見抜けず、事態を悪化させてしまった。

 韓国Samsung Electronics社による「Galaxy Note 7」の発火事故に関する調査報告を分析すると、当初の製品と1次リコール後に改良した製品で電池セルの発火原因が異なり、リコール後の電池セルに、より致命的な不良があったことが分かった。Samsung Electronics社の発表と同社への独自取材、発表後に同社の電池アドバイザーに就任した雨堤徹氏(Amaz技術コンサルティング代表)をはじめとする専門家への取材から、事故原因の深層に迫る(図1、図2)。

図1 原因は電池セル自体によるものと結論
図1 原因は電池セル自体によるものと結論
Samsung Electronics社による記者会見のネット中継の1コマ。再現実験の結果、事故は電池セル自体の問題により引き起こされたものとした。同社では巻回式のラミネート型電池を採用していた。(写真:Samsung Electronics社)
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図2 「電池の設計、生産に不備」
図2 「電池の設計、生産に不備」
Samsung Electronics社のGalaxy Note7で推測された主な発火原因をまとめた。同社は、Liイオン2次電池の設計や生産に不備があったと発表し、特に検査・試験体制を強化するとした。防水・防塵仕様による高気密性やワイヤレス給電、急速充電などには問題はなかったとした。サードパーティーの機器を使った充電や使用環境については言及しなかった。
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 雨堤氏は「安全な電池セルには(1)安全な材料(2)安全な設計(3)安全なプロセスが必要」と言う。この3つの視点から今回の問題を見ていこう。