2020~2030年に向けて環境・安全規制は、より深い視点からの強化が図られる。例えば、環境規制ではより実態に見合った効果(質)の高いものへと進化させる見直しが進行中。安全基準・アセスメントでは、事故を未然に防ぐ予防安全重視の方向に舵を切ることで、事故の減少により貢献し得るものへと進化する見通しだ。

 欧州でも米国並みの金銭補償を――欧州委員会は2016年1月、ドイツVolkswargen(VW)社の排ガス不正に関連して、同社にこう要求した。同社がこの要求を飲めば、その対象台数は欧米合わせて900万台を超え、同補償金だけでも1兆600億円超(1ドル=118円換算)。そこに最大180億ドル(2兆1240億円)とされる米環境保護局(EPA)の制裁金や同社が計上しているリコール費用65億ユーロ(1ユーロ=129円換算で8385億円)を足すと、費用負担だけでも4兆円超の規模になる。

 しかも、同社は今回の排ガス不正で大きくブランドを傷つけた。その代償は計り知れない。2015年通期の販売台数こそ、993万6000台と前年比2%減に踏みとどまったが、ディーゼル車を中核とするこれまでの開発方針を見直して、電動車両重視へと大きく転換せざるを得なくなった。

 このように自動車分野の規制・基準は、遵守できない場合、大きな代償が課せられる。それと同時に、時として自動車開発の大方針にすら大きな影響を与える。中でも大きな影響力を持つのが、環境や安全に関する規制・基準だ。そこで本号では、乗用車を対象に環境・安全に関わる2030年までの規制・基準の動向を追った(表1、2)。

表1 乗用車における環境規制に関するロードマップ
MYはモデルイヤー、加州は米カリフォルニア州のこと。
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表2 乗用車における安全基準・アセスメントのロードマップ
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