NTNはSUV(スポーツ・ユーティリティー・ビークル)などに向く等速ジョイント(Constant Velocity Joint)である「CFJ」を開発した(図1)。ジョイントを大きく折り曲げてもトルク損失率が高くならない。等速ジョイント内部のボールを位置決めする方法を根本から変えることで実現した。

図1 開発した等速ジョイント「CFJ」
図1 開発した等速ジョイント「CFJ」
トルク損失率が少ない特徴がある。ジョイント角度が12度の場合、現行品のEBJに比べて半減できた。
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 等速ジョイントは自動車では、駆動軸やステアリング、プロペラシャフトなどで使う。今回NTNが開発したのは駆動軸用で、エンジンから車輪へ動力を伝える役割を担う。プロペラシャフト用の等速ジョイントに比べて、大きな作動角に対応する必要がある。

 等速ジョイントは4WD(4輪駆動)車、FF(前部エンジン・前輪駆動)車など前輪を駆動する車種に使う(図2)。前輪左右のタイヤの中心付近に配置する。このタイヤ側のジョイントはサスペンションの上下の動きだけでなくハンドルを切った動きによっても折れ曲がるので、車両中央側にある最終減速機(通称、デフ)のジョイントよりも、ジョイント角度が大きい。その代わり、伸縮する機能は要求されない。トルク損失率は1%未満とそれほど大きくないが、市場からは「もっと低く」という要求が来る。それほど燃費を良くするニーズは強いようだ。

図2 左右のタイヤをつなぐドライブシャフトの両端に配置する
図2 左右のタイヤをつなぐドライブシャフトの両端に配置する
「CFJ」はタイヤ側に使う固定式等速ジョイント。作動角は大きいが伸縮する必要はない。
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 従来の等速ジョイントである「BJ(Ball fixed Joint)」「EBJ(high Efficiency compact Ball fixed Joint)」は真っ直ぐに近い状態で使うとトルク損失率が小さいが、角度を付けると大きくなることが、車種によっては課題だった(図3)。BJは20世紀から造っているボール6個の従来型ジョイントである。EBJは同形式だが、ボールを8個にした現行品だ。

図3 ジョイント角度とトルク損失率の関係
図3 ジョイント角度とトルク損失率の関係
特に6度を超えるとトルク損失率が急上昇する。
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 SUVでは高い最低地上高を確保するため、中央にあるデフを高めに設計することが多い。ホイールも大きいので車輪の中心線も高いのだが、デフの高さの影響の方が大きい。どうしても車軸は中央が高く、左右が低くなるので折れ曲がり、ジョイントを大きめの角度で使うことになる。