米大手IT企業を警戒し、自動車のデータをクラウドではなく車両側に集める技術が脚光を浴びる。代表例がブロックチェーンだ。クラウドにデータを送ることなく、安全に管理できる。決済に加えて、シェア(共有)との親和性の高さに注目する提案が相次ぐ。自動車に近い場所や車載コンピューターでAIを実行する、フォグ/エッジ解析の開発も進む。
IoTの“通信端末”である自動運転車が普及する時代を見据え、自動車各社がこぞって注目し始めたのがブロックチェーンだ。仮想通貨「ビットコイン」の中核技術で、「分散台帳」とも呼ばれる。分散したコンピューターの間でデータを監視し合うことで、特定の管理者がいなくとも改ざんなどを防げる。
仮想通貨で脚光を浴びるため、金融業界が熱心に研究する。だが信頼性の高いデータの記録に着目すれば、自動車にも応用し得る。世界の自動車各社がどう使えるのか模索し始めた。
トヨタ自動車の金融子会社トヨタファイナンシャルサービスは2016年7月、ブロックチェーンを手掛ける米R3CEV社が主催する団体に加わった。世界の大手金融機関が参加する。情報収集が主な狙いだろうが、自動車メーカーが同団体に加盟するのは初めてだ。
実証実験にいち早く取り組むと発表したのが、ドイツZF社である。2017年1月、銀行大手のスイスUBS Group社とドイツinnogy Innovation Hub社と共同で、ブロックチェーンを自動運転車や電気自動車(EV)などの決済に使うサービス基盤「Car eWallet」を開発すると発表した(図1)。2017年内に実証実験を始める計画だ。