ソフトバンクが、自動運転時代を見据えて事業領域を着々と広げている。狙うのは、IoTで重要な“通信端末”になる自動運転車の“インフラ”を構築すること。Google社のいない中国以外で、自動運転車のハードとソフトを手掛ける可能性は低い。同社を率いる孫正義氏が描く未来図を読み解く。

 「事故のない世界を実現する」(ソフトバンクグループ社長の孫正義氏)―。

 巨額の買収を重ねて急成長を遂げる通信事業者のソフトバンクグループ。自動運転開発で急激に存在感を高めている。2016年4月、自動運転を手掛けるSBドライブを設立。同年7月には、半導体設計の英ARM社を3兆円超の巨額で買収した。スマートフォンのCPU(中央演算装置)で圧倒的なシェアを占める。同月にはホンダと人工知能(AI)の開発で提携した。

 孫氏が目指すのは、「人類史上最大のプロジェクト」と見るIoT(Internetof Things)のけん引役になることだ(「シンギュラリティーが目の前に」参照)。自動車は、IoT市場で大きく稼ぐのに欠かせない“通信端末”に映る(図1)。

図1 IoTで自動車を含む通信端末が爆発的に増える
図1 IoTで自動車を含む通信端末が爆発的に増える
ソフトバンクは通信や半導体などを組み合わせて、“データの流通インフラ”と呼べるものを構築したい考えだ。グラフは2035年までの通信端末数の予測。Ericsson社のデータを基にソフトバンクが推定した。
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