毎年秋にドイツ・ニュルンベルクで開催される産業用制御システムの展示会「SPS IPC Drives」は、多くのメーカーが最新の技術コンセプトや製品をこぞって出展することから、生産ラインの将来像を見通す場としても活用されている。2016年の同展示会で日本からの来場者が多数訪れていたのが、ドイツBeckhoffAutomation社のブースである。来場者のお目当ては、同社が開発を主導する「EtherCAT」の技術動向だ。

 EtherCATは生産ラインなどで使われるオープン・フィールドネットワークの通信規格であり、その普及や導入支援を手掛けるEtherCAT Technology Groupには全世界で3500社以上の企業が加盟している。日本でも2016年4月にトヨタ自動車が「スマート工場のコンセプトに合致する」(同社先進技術開発カンパニー工程改善部長の大倉守彦氏)として採用を表明したことで、一気に関心が集まった(EtherCATを巡る動向については、別掲記事を参照)。

 トヨタ自動車がEtherCAT採用の決め手として挙げたのが、EtherCATの拡張規格「EtherCAT P」である(図1)。EtherCAT Pは、データ通信と電力供給を1本(4線)のケーブルに統合する技術だ。同社は、スマート工場の実現に向けて、生産ラインにセンサーを張り巡らし、計測データやその分析結果を活用することで、生産ラインを賢くしようとしている1)。その計測データを集める手段として、EtherCAT Pのような省配線技術が使えると考えているのだ。そこにビジネスチャンスを見いだした企業がBeckhoff Automation社のブースを訪れたことは、想像に難くない。

図1 Beckhoff Automation社による「EtherCAT P」の展示
図1 Beckhoff Automation社による「EtherCAT P」の展示
EtherCAT Pはドラフト版が公開されている段階だが、実際のケーブルやコネクターが多数出展されたことから、関心を集めていた。
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