2016年11月に開催された工作機械の展示会「JIMTOF2016(第28回日本国際工作機械見本市)」で、一風変わった展示があった。ジェイテクトのブースである。多くの工作機械メーカーがたくさんの自社製品をズラリと並べる中、ジェイテクトは2台しか自社製品を展示していなかったからだ。しかも、そのうち1台は歴史的な製品であり、最新製品は1台だけ。大手メーカーとしては異例の試みといえる。

 その代わりに同社が力を注いでいたのは、巨大スクリーンを使った映像によるプレゼンテーションである。そして、特に時間を割いていたのが、同社のコントローラーや工作機械を活用したスマート工場事例の紹介だった(図1)。

図1 ジェイテクトが支援したスマート工場の事例
図1 ジェイテクトが支援したスマート工場の事例
ここで示したのは、工具寿命を予測するものである。TOYOPUC-Plusはネットワーク接続機能、同AAAはデータ分析機能を持つジェイテクトのコントローラー。
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 そこには、同社の事業戦略が如実に反映されている。つまり、コントローラーや工作機械を売るだけではなく、スマート工場の実現を支援する“ラインビルダー”になるという宣言なのである。

 同社には、トヨタ自動車系列の部品メーカーとしての顔もある。コントローラーについては、もともとトヨタ自動車系列向けだったが、近年は広く提供するようになった。何より、「トヨタ生産方式」という生産ラインに関する圧倒的なノウハウを持っているのが強みだ。これらのノウハウや製品を結集することで、ラインビルダーとして独自の地位を築こうとしている。

 ジェイテクトがラインビルダーとしての需要を期待しているのは、中小企業だ。「自動車業界でいえば、自動車メーカーやティア1、ティア2(1次、2次の部品メーカー)は自分たちだけでスマート工場を実現できる力がある。しかし、ティア3、ティア4となってくると、社内のリソースも限られているので、なかなか対応できないだろう。そこを支援したい」(ジェイテクト取締役副社長で工作機械・メカトロ事業本部本部長の井坂雅一氏)。