コンセプトの議論から現場での実証へ─。「スマート工場」の実現に向けた取り組みが加速している。
パナソニックのグループ企業で、電子部品実装システムなどを手掛けるパナソニックファクトリーソリューションズ(以下、PFSC)。その主力工場がある甲府事業所の一角で、同社製の実装機やはんだ印刷機で構成された最先端のプリント基板生産ラインが稼働している(図1)。パナソニックが顧客に提供する「スマートファクトリーソリューション」のさまざまな機能を、事前に実証するためのものだ。
ここで新たに生まれたのが、実装機の経時変化などによる実装位置のズレを自動で補正する「APC-MFB」機能である(図2、3)。この機能では、プリント基板に電子部品を実装した直後に実際の実装位置を計測し、その計測データを統計的に分析。実装位置のズレの傾向を把握し、狙い通りの位置に実装できるように制御プログラムに反映させる。現在は人が手作業で分析・補正しているが、生産ラインが自動で分析・補正することによって、品質や生産性を大幅に高められるという。
もともと、パナソニックのスマートファクトリーソリューションには、はんだ印刷位置に合わせて実装位置を補正する「APC-FF」機能があった。実装する直前にはんだ印刷位置を計測し、その箇所に実装することで、リフローはんだ付け時の「部品立ち」などを防ぎ、はんだ付け後の品質を高めるというものだ。
しかし、現実には前述のような経時変化による実装位置のズレが生じており、品質不良の原因になり得る。APC-MFB機能は、統計分析の結果をリアルタイムで生産ラインの制御に生かすことで、それさえも解消しようとしているのだ。「これまでの属人的なアプローチでは、もはや生産ラインは運用できない。ものづくりをデジタル化し、生産ラインが自律的に回る仕組みを構築していかなければならない」(パナソニック オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社スマートファクトリーソリューション事業部ビジネスイノベーションセンター ソリューションエンジニアリング総括部部長の島田篤人氏)。
近年、「Industrie 4.0(インダストリー4.0)」や「ロボット革命」といったコンセプトが提唱され、それらに基づいて製造業全体のビジネスモデル変革から工場の生産性向上まで幅広いテーマが活発に議論されてきた。今後もコンセプトの議論は続くだろう。それと並行して、スマート工場によって得られる成果や必要な技術を見極めるための動きが次々と始まっている。