人間のような小脳処理機能と汎用AIを実現する─。そんな野心的なプロジェクトが日本で始まっている。挑むのは、半導体ベンチャーのPEZY Computing(以下、ペジーコンピューティング、本社東京)と、サイボーグ型ロボットを手掛けるCYBERDYNE(以下、サイバーダイン)だ。

 その狙いはサイバーダインが開発する「ロボットスーツHAL(以下、HAL)」の次世代モデルの性能を飛躍的に高めることにある(図1)。HALは人間の脳から運動神経に伝達する微弱な生体電位信号をセンシングすることで、身体に障害がある人の動作を支援する製品だ。

図1 「ロボットスーツHAL」
図1 「ロボットスーツHAL」
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 人間は脳で「歩きたい」と考えることで、神経を通して必要な信号を筋肉に送り出している。その信号を受け取ったそれぞれの筋肉は、脳で考えた動作に合わせて、必要な力の分だけ筋肉を動かす。

 人間の皮膚の表面から漏れ出すその信号を、HALは独自開発したセンサーで読み取り、その人がどのような動作をしたいのかを認識して、ロボットスーツを制御。立ったり、歩いたりといった動作を支援する。 

 だが、脳を経由して送られてきた信号を捉えて動かす以上、HALの動きにはわずかながらタイムラグが発生することは避けられない。