今、人工知能(AI)をすぐにでも活用したい企業の“駆け込み寺”になっているベンチャー企業がある。ディープラーニングによるデータ分析技術を専門に手掛けるクロスコンパス・インテリジェンス(本社東京、以下XCI)だ。

 同社の持株会社であるクロスコンパスは、東京工業大学発のAIベンチャー企業として2011年に設立された。翌2012年から本格的にディープラーニングの研究・開発に着手し、2015年4月にディープラーニング専業の会社としてXCIを新設したという経緯がある。

 社員は10人に満たないXCIだが、注目度は高い。会社設立から1年経っていないにもかかわらず、大企業を中心に50社以上から引き合いを受けた。現在はそのうち5社ほどと協業しているという。

 その1社がルネサス エレクトロニクスだ。同社は現在、FA機器向け半導体でAIを活用するための技術開発に力を注いでいる(Part2を参照)。XCIが担っているのは、半導体に組み込むAIモジュールの開発である。2015年12月に開催されたFA技術の展示会「システムコントロール フェア 2015」で、ルネサス エレクトロニクスがAIによる品質検査のデモンストレーションを実施した際にも、データ分析などで全面協力した(図1)。

図1 ルネサス エレクトロニクスとの協業成果
図1 ルネサス エレクトロニクスとの協業成果
「システム コントロール フェア 2015」でルネサス エレクトロニクスが実演したもの。ベルトコンベヤー上を流れるモデルカーの寸法を計測し、良否を判定している。計測データの分析にAIを活用しており、XCIが技術を提供した。
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 ディープラーニングはここ数年で急速に進化した技術なので、大企業といえども技術的な蓄積や詳しい人材はそれほど多くない。AIをすぐに活用したいし、そのためのデータもあるが、使いこなすためのノウハウや人材が足りない。そんな悩みを抱える企業の“黒子役”としてXCIの存在感が高まっているのだ。