ファナックから9億円、そしてトヨタ自動車から10億円。日本の製造業を代表する企業から相次いで出資を受けたPreferred Networks(本社東京、以下PFN)にとって、2015年は自らの存在を広く世に知らしめた年となった。

 PFNは、ディープラーニングを中心とした機械学習技術に強みを持つベンチャー企業である。同社がこれほどまでに人気を博しているのは、その技術力もさることながら、同社が長年にわたってロボットや自動車などの分野に力を注いでおり、製造業向けの技術を着実に蓄積しているからだ(図1)。

図1 PFNの機械学習技術
図1 PFNの機械学習技術
写真は、ロボットカーを使った「分散深層強化学習」の様子。道に沿って速い速度で進んだときには“報酬”を、壁や他のロボットカーとぶつかったり、道を逆走したりしたときには“罰”を与えることで、人が詳細な制御プログラムを設計しなくても、AIが自動で最適な制御プログラムを獲得していく。
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 そもそもPFNは、IoT(Internet of Things)に焦点を合わせた機械学習技術の企業として、最先端のITを幅広く手掛けるPreferred Infrastructure(本社東京)からスピンアウトする形で2014年10月に設立された。両社の代表取締役社長兼 最高経営責任者である西川徹氏は、IoTについて「日本が主導権を握れる有望な領域」と見る。PFN設立後は、ファナックやトヨタ自動車に加えてパナソニックとも業務提携したり、創薬分野に進出したりするなど、急速に事業を展開してきた。

図2 バラ積み部品のピッキング
図2 バラ積み部品のピッキング
2015年12月の「2015国際ロボット展」で、ファナックのブースにおいて実演したもの。部品に関する情報などは事前に与えなくても、「能動学習」による試行錯誤だけで最終的に約9割の成功率で部品をピッキングできるようになる。
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 現実に、PFNは少数精鋭のベンチャー企業という利点を生かして、次々と成果を出している。2015年12月の「2015国際ロボット展」では、ファナックのブースでバラ積み部品のピッキングを実演(図2)。2016年1月に米国ラスベガスで開催された「2016 International CES」では、トヨタ自動車のブースで複数台のモデルカーが走行しながら学習していく自動運転技術を披露した。いずれもPFNのAIを活用したものだ。