人工知能(AI)は、米国のGoogle社やIBM社に代表されるIT(情報技術)企業が研究する技術というイメージが大きく変化している。最近になって製造業でAIを活用する動きが急速に広がっているからだ。

図1 トヨタ自動車社長の豊田章男氏とGill Pratt氏
図1 トヨタ自動車社長の豊田章男氏とGill Pratt氏
2015年11月にトヨタ自動車はAIの研究子会社を米国に設立することを発表した。
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 2016 年1月、トヨタ自動車は米シリコンバレーにAI研究子会社を設立した(図1)。2015年9月にはファナックもAIベンチャーのPreferred Networks(PFN)に出資し、産業用ロボットにAIを搭載する実証実験を既に始めている。

 日本を代表するものづくり企業が動いた背景には何があるのか。

「AI は破壊的なイノベーションだ。今までの技術の延長線上とは全く違う。ものづくりは根本から変わる。これまでの『機械は自ら(画像や音声を正確に)認識できない』という前提が覆る。人間が神様になって任意の動物を作れるようになったようなものだ」。東京大学准教授の松尾豊氏はこう言い切る。

 トヨタ自動車社長の豊田章男氏はAIがものづくりを変える可能性を知り、考えを改めた。「しばらく前の私は、自動運転の車が人間チームに勝ったらもう少し(AIの研究を)進めようといった考えだった。だが、米国の第一人者と話す中で、AI技術はこれからの人々の社会や生活を大きく変える基盤になると考えるようになった。自動車を含む新たな産業を創出する可能性があって本当にわくわくする。だから研究子会社を作って、クルマやモビリティーの枠を超えて、人や社会に貢献できる可能性を追求することを決めた」(豊田氏)。