ポストLIBの開発では、世界の研究機関や企業が、さまざまな種類の電池技術で、一刻も早い実用化を目指している。開発は一見バラバラなようだが、1つの電池技術の開発成果が他の電池技術の課題を次々に解決する例が多数あり、開発スピードは急速に高まっている。全固体電池のように、当初の2030年という実用化目標時期から5年の前倒しを発表するメーカーも出てきた。
Liイオン2次電池(LIB)の限界を超える電池技術「ポストLIB」の開発については、幾つもの種類の技術が同時並行的に開発されている。それらは具体的には、(1)現行LIBの枠組みのまま、各材料を刷新することで性能の大幅向上を目指す「先進LIB」、(2)電解質を固体材料にした「全固体電池」、(3)Liイオンではなく他のイオンで充放電する「非Liイオン電池」、そして(4)正極材料が酸素の「金属空気電池」の4種類に大別できる。
【先進LIB】
常識破りの電解液が話題の中心に
先進LIBは、Liイオンと液体電解質を使うという点で現行LIBと共通しているが、材料系やその充放電の仕組みは大きく異なる例が多い(図1)。開発は正極材料、負極材料、電解液、導電助剤などで同時並行的に進められている。それぞれの研究開発で大きなブレークスルーが相次いだ。
その中で正極材料は最近まで「研究し尽くした感がある」(ある研究者)という意見がでるほど、閉塞感が漂っていた。その閉塞感を打ち破り、明るい展望が見えつつあるのが、「Li過剰系」と呼ばれる材料群である。
これまでLIBの正極は、LiMO2(Mは遷移金属)という構成の材料がほとんどだった。酸化数に着目するとLi+M3+O22−となる。充電時は、M3+が酸化されてM4+となり電子を集電体に渡すと同時に、Li+が解離して電解液中に溶出する。残ったLi1-xMO2は比較的安定とされる注1)。