ヘッドマウントディスプレー(HMD)と体感ゲーム機のようなメカ機構を組み合わせた装置で、VR(バーチャルリアリティー)を楽しむ「ロケーションVR」のサービスが本格化している。中でも積極的なのが、バンダイナムコエンターテインメントだ。同社は、ロケーションVRの施設を東京・新宿に開設し、2017年7月から運営を始めた。同施設の責任者の小山順一朗氏に、施設開設の狙いなどを聞いた。

小山 順一朗氏 (こやま・じゅんいちろう)
小山 順一朗氏 (こやま・じゅんいちろう)
日本大学理工学部卒業後、1990年にナムコ入社。メカ技術者として体感ゲームに従事。2015年から、VR関連プロジェクトを主導。日本のVR業界では「コヤ所長」として知られる。(人物写真:加藤 康)

 VR(バーチャルリアリティー)のキラーコンテンツは何か。それは「取り乱す」コンテンツです。実際、我々が2017年7月に東京・新宿に開設した「VRアクティビティー」の施設「VR ZONE SHINJUKU」では、「さあ、取り乱せ。」をキャッチコピーにしています。VRアクティビティーとは我々の造語で、ヘッドマウントディスプレー(HMD)による映像だけでなく、コンテンツに連動した振動や音などを発生させる座席やコントローラーといった「メカ機構」を組み合わせたものです。

 VR ZONE SHINJUKUのような施設をVR業界では、家庭でプレーするHMD中心のVRと分けるために、「ロケーションVR」と呼びます。VRアクティビティーは、ゲームセンターにあった「体感ゲーム」の進化した姿、と考えると分かりやすいかもしれません。

 大人になればなるほど、取り乱すことは少なくなります。人前だとなおさらです。ですが、VRアクティビティーであれば、冷静な人だって取り乱す。VR ZONEを始めるにあたり、社内で社長以下、何名かの経営陣にVRアクティビティーを試してもらったところ、面白いように取り乱しました(笑)。例えば、「極限度胸試し高所恐怖 SHOW」という、ビルの高所から外側に飛び出ている細い木の板を伝って歩き、その板の先端にいるネコを助けるというコンテンツがあります。これを体験してもらったところ、ある人は四つん這いになって「怖い怖い」と大騒ぎ。冷静な経営陣の取り乱す姿を見てこれはいけるな、と手応えを感じました。体験者が取り乱して「ワー、キャー」と言う姿は、外から見ている人や順番を待って並んでいる人から見ても、面白いので飽きません。