印刷技術で電子デバイスや電子回路を作る「プリンタブルエレクトロニクス」分野で注目を集めるのが、2014年1月創業のAgIC(本社・東京)である。導電性インクを利用した電子工作キットや、家庭用プリンターで導電性インクを印刷可能にする技術などに強みを持つベンチャーだ。同社の創業メンバーの1人で代表取締役の清水信哉氏に、同社の戦略や注力事業などを聞いた。

(写真:加藤 康)
(写真:加藤 康)
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 印刷技術で電子デバイスや電子回路を作る「プリンタブルエレクトロニクス」は以前から注目を集めながら、なかなか市場は立ち上がっていません。その一因は、大手企業が中心となって開発を進めてきたからだと考えています。

 大手企業はベンチャーのように、新しいことに機動的に挑戦するのが難しい。新しいことほど、失敗する可能性が高く、大手企業が築いてきた「ブランド」に傷がつく恐れがあるからです。

 加えて、プリンタブルエレクトロニクスでは、材料技術や電子回路技術、印刷技術など複数の技術を摺り合わせる必要があります。ところが、材料メーカーは材料だけに、印刷機メーカーは印刷技術だけに焦点を当てて開発しがちです。それぞれは優れた技術にもかかわらず、組み合わせるとなかなかうまくいかない。そんな場合がままあります。

 我々であれば、こうした課題を解決できると思っています。ベンチャーですから、機動的に新しいことに挑戦できる。それから、異なる企業が持つ材料技術や印刷技術など、プリンタブルエレクトロニクスに必要な要素技術を摺り合わせる仲介役になれます。

 例えば、電子回路を描くために必要な導電性インクでは三菱製紙と、印刷技術ではミマキエンジニアリングと協力しています。描いた電子回路にLEDなどの部品を実装するのに必要な導電性接着剤では、AgICの出資者でもあるセメダインの協力を仰いでいます。こうした企業と連携しながら、我々は導電性インクに適合した、独自の印刷技術の開発に取り組んでいます。