「ソニーが作ったおもちゃ」として注目を集める「toio(トイオ)」。小型ロボットに紙やレゴブロックなどで作った「かぶりもの」を載せて遊ぶ。2017年12月の発売前の6月に先行予約販売を始めたところ、初回限定版や通常版の一部が完売するなど、人気を博している。そんなtoioの開発を主導する田中章愛氏に、電子玩具との違いや事業戦略などについて話を聞いた。

田中 章愛(たなか・あきちか)氏
田中 章愛(たなか・あきちか)氏
筑波大学大学院を修了後、ソニー入社。ロボットの研究開発などに従事し、2014年から新規事業創出プログラムの立ち上げ・運営に携わる。2016年からtoio事業を率いる。(写真:加藤 康)

 私はもともと、ハードウエア関係、特にソニー本社の研究所でロボットを研究開発していました。そのころ、新しいエンターテインメントとして、実世界で何かゲーム性のある遊びができるのではないかという研究として、ソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL)のAlexis Andreと共に取り組んでいたのが、「toio」(トイオ)の出発点です。2012年のころでした。

 実世界の良さは、直接、世界やキャラクターを「いじれる」ところです。仮想空間内でリモコンやコントローラーなどを使って間接的にキャラクターをいじっても楽しいのですが、仮想空間で物理的な感覚として「モノに触れる」ことは、大がかりな装置を用いた壮大な研究テーマになるほど、さまざまな技術を使わなければ実現できません。コントローラーのボタン操作で、仮想空間内に自分の好きなキャラクターを作るにも、複雑なコマンド操作や高いスキルを要求されます。

 一方で、実世界であれば、自分が作ったキャラクターを動かす喜びを提供しやすい。おもちゃの世界に入り込んだと錯覚する遊びを提供できれば、子供は夢中で楽しむし、いろいろな学びを得られると考えたところから研究を始めました。何より、子供の創造性を引き出す遊びを実現しやすい。