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日経エレクトロニクス 2017年5月号

Challenger

5年先行く並列ソフト技術、デスバレーの先に巨大市場

オスカーテクノロジー 代表取締役社長 小野 隆彦氏

  • 聞き手=今井 拓司
  • 2017/04/19 00:00
  • 1/2ページ

出典:日経エレクトロニクス、2017年5月号、pp.100-101(記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)

オスカーテクノロジーは、2017年3月に産業革新機構やデンソーなどの出資を受けた。同社が手掛けるのは、通常のソフトウエアを多数のコアで並列に実行可能な形式に自動変換できるコンパイラ。早稲田大学の笠原・木村研究室が開発した技術を商用化する。新市場の立ち上げを目指す小野社長に、事業の展望を聞いた。

小野 隆彦氏(おの・たかひこ)
1951年生まれ。1974年慶応義塾大学卒業。1991年に小野測器 代表取締役社長に就任。2002年から早稲田大学客員教授。2013年にオスカーテクノロジーを設立し現職。

 我々はベンチャー企業の最も厳しい時期、デスバレーを通過中なんです。売り上げが少ないにもかかわらず、月間2000万円以上のお金が外に出て行っている。我々のエンジニアと外部の力を使って、ソフトウエアを全て書き直しているからです。(製品の基になった)大学で作ったソフトウエアは研究開発用なので、使い勝手は考慮されておらず、バグがあっても徹底的には潰していない。だから、何十万行のソフトウエアをうちの技術者が全部読んで、仕様書を書くところから始めました。

 早稲田大学と契約した後にソースコードをチェックしたら、かなりこれは大変だなと。経営上の観点から、2017年3月をメドに商用版を投入する計画でしたので、一から作るのでは間に合わず、書き換えるしかなかったんです。正直に申し上げると、コストは当初もくろんだ額より膨らんでいます。3億円くらいだろうと考えていましたが、実際には倍以上かかっています。2017年3月に完成した商用のソフトウエア「OSCARTechコンパイラ Ver.2.0」は自動車産業向けで、(車載システム開発向けのプロセスモデルの)Automotive SPICEや、(機能安全の国際標準規格の)ISO26262への対応が必要だったこともありますが。

 (ソフトウエアの並列化の技術では)他社より5年は先行していると考えています。他社の並列化の技術は、基本的に(同様な処理を繰り返し実行する)ループを、複数のコアに分割するものです。我々はそれだけでなく、プログラムの全体を眺めて並列化できる処理をさまざまな粒度(マルチグレイン)で抽出できます。特に、関数同士とか、繰り返し部分と関数とか、大きな要素の間で依存関係を調べて、並列に実行できる部分を見つける、粗粒度並列と呼ぶ技術が大きな特徴です。

 実際、自動車向けの制御ソフトではループが全然ないんですよ。「If…Then」の条件分岐がほとんどで、今までの並列化手法は全く使えない。一方で笠原研とトヨタ自動車やデンソーなどとの共同研究では、エンジン制御のソフトウエアを2コアで実行できるようにすることで、1.95倍に高速化できました。研究では、用途は違いますが、16コアで11.55倍とか、64コアで55倍といった成果もあります。

 今のコンパイラは自動車産業用としていますが、基本的には制御用のソフトであれば、どれでも適用できる手法の塊ですね。ロボットとか産業機械などの制御一般で使えます。ただ、ロボット業界で要求される内容が自動車業界と異なる場合にはソフトをチューニングしないといけないですが。

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