米Fenox Venture Capitalが主催する「Startup World Cup」の日本予選で優勝したユニファは、「家族をつなぐメディア」の実現を目指す。2017年にも、幼稚園や保育園向けに、ネットワークにつながる体温計などと人工知能(AI)を組み合わせて子供を見守るサービスを開始。そこで蓄積したデータを、家族の豊かなコミュニケーションに生かす計画だ。

土岐 泰之氏(とき・やすゆき)
土岐 泰之氏(とき・やすゆき)
1980年生まれ。九州大学を卒業し、住友商事、ローランドベルガー、デロイトトーマツコンサルティングを経て2013年にユニファを設立し現職。(写真:加藤 康)

 我々は、保育園や幼稚園、子育ての業界と一緒に、子供の見守りに関するAIの事業を進めています。我々が解決を目指すのは、保育士が足りなくて起きる死亡事故や、子どもがずっと保育園にいて保護者と一緒にいられない問題です。

 現在は、(保育士がスマホやタブレットの)アプリで写真や動画を撮ると、全自動でインターネットのサイトにアップロードされる、「るくみー」というサービスを手掛けています。保護者が我が子の写真を登録すれば、画像認識技術で自動的に我が子の写真が集まります。(写真撮影ができ、園児を見守る据置型ロボットの)「MEEBO(みーぼ)」の事業も含まれます。

 「Startup World Cup」の日本予選で発表したのは新規事業がメインです。写真事業で保育の現場に入って、色々な問題が見えてきました。例えば年間で100件以上の乳児の死亡事故が起こります。8割ぐらいが睡眠中で、中でも6割ぐらいはうつぶせで寝ていて死亡事故が起きるんです。園の現場では、5分置きに、寝ている子どもの向きを手書きで記録しています。目で見て、全員分です。体温も1回当たり1分かけて、手で記録している。おたより帳も、睡眠時間も、食事の様子も全部手書き。あまりにも業務の負荷が大きいうえ、データが一切蓄積されない。このためベテランの保育士ならば気が付く風邪や死亡事故の予兆に、若手がなかなか気付けず、問題が起きてしまう。

 我々はそれら全ての作業をデジタル化しようとしています。例えば、連絡帳の電子化を進めていて、先生にタブレットを渡して、我々が開発しているアプリで、今日の食事の様子などさまざまな情報が、ボタンを押すだけで手軽に入力できます。今は試験的に動いており、今年の春から正式にサービスを開始します。手軽に体温測定ができるスマート体温計サービスの準備も進めています。

 2017年夏には、AIを使った、現場の保育士への注意喚起サービスを始めたいと考えています。どんどん蓄積されるデータを、ほかの園のデータと連携して、例えば0歳児の呼吸のリズムを風邪の予兆の検知に使うとか。