“1兆個センサー時代”に向けて、センサーメーカーが十分な収益を確保して事業を継続できるようにする取り組みが始まった。センサーの低コスト製造技術の確立に加え、IT企業に偏る収益をセンサーメーカーに分配する仕組みを設けることを狙う。収益分配の仕組みは議論先行で、具体的な動きはまだ表面化していない。

 「センサーメーカーは(生み出す)データの所有権を(センサーが現場で使われた後にも)維持できなければ、収益を(IT企業などに)搾取されることになる」。2015年12月に米国で開催されたイベント「TSensors Summit 2015」で、イベントを主導したJanusz Bryzek氏が強調したのが、“1兆個センサー社会”でセンサーメーカーが十分に稼ぐために求められる対応だ。多くのセンサーメーカーの共通認識を代弁した発言でもある。

 データ解析によって収益の大半を得ると見られるIT企業に対して、センサーメーカーはわずかな収益しか得られない恐れがある。対策としてセンサーメーカーが考えていることは、大きく5つある。

 (1)センサーのハードウエア部分を低コストに製造する技術の確立、(2)他社にない特徴があるセンシング技術の開発、(3)IT企業に偏りがちな収益をセンサーメーカーに分配する業界モデルの構築、(4)IoTエコシステム全体をセンサーメーカーがソリューションとして提供する事業の構築、(5)多様な顧客への共通の開発プラットフォーム(基盤)の提供、である(図1)。

図1 データ解析による利益の分配を
図1 データ解析による利益の分配を
IoTシステムでは、実現の要の1つであるセンサーよりもデータ解析によって、より多くの収益が生み出されると業界関係者は考えている。そこで安価なセンサーの大量供給が持続するよう、センサーメーカーが事業を継続できる技術や仕組みを模索する動きが出てきた。(1)センサーの低コスト製造技術と(2)他にないセンシング技術の確立を目指しつつ、(3)データ解析企業からの収益分配や(4)センサーメーカーなどによるソリューション提供、(5)開発や製造の共通基盤提供の実現の可能性をうかがう。
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 このうち(3)~(5)を中心に議論や取り組みを紹介する。