生き残り戦略のポイント
  • 計器類やボディー系電子部品でメガと勝負
  • EV駆動システムと冷暖房技術で差異化を図る
  • 自動運転の中核は手掛けず「選択と集中」
企業データ
  • 事業内容:内装、冷暖房、計器、排気系
  • 売上高:1兆533億円(連結:2017年3月期)
  • 営業利益:382億円(同上)
  • 従業員数:約2万2000人(2017年3月)

 2017年5月に上場廃止して日産自動車系列を離れたカルソニックカンセイ。米大手投資ファンドKohlberg Kravis Roberts社(KKR)傘下に入った。自動車メーカーと資本関係のない独立系部品メーカーとして、再出発する。

 カルソニックカンセイ親会社の経営陣は、KKR傘下に入る前からカルソニックカンセイの社長だった日産出身の森谷弘史氏に加えて、KKR出身の4人が非常勤で入る混成チーム。最大の課題は、メガサプライヤーと競いながら、日産以外の販売先を増やしていくことだ。売上高に占める日産の比率は8割超に上る。

 売上高は1兆円超。日本の独立系で大きいが、メガと真っ向勝負するには小さい。部品首位のドイツBosch社の売上高は730億ユーロ(約9兆9000億円)、2位の同Continental社は405億ユーロ(約5兆5000億円)だ。メガと競う分野を見極めて、挑む。

 KKRとともに照準を合わせるのが、顧客となる自動車メーカー(OEM)が自ら手掛けられなくなる可能性が高い分野である。計器類やボディー制御ECU(電子制御ユニット)などだ。

図1 カルソニックカンセイ社長の森谷弘史氏
図1 カルソニックカンセイ社長の森谷弘史氏
分野を見極めてメガと「真っ向勝負する」。
写真:宮原一郎
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 自動車メーカーは今後、自動運転やモビリティーサービス、電動化に多くの開発資源を投じざるを得ない。計器類やボディー制御など既存の車内電子部品は、開発の優先順位を下げる方向になる。多くの自動車メーカーが企画までにとどめて、設計をほとんど手掛けなくなる可能性が高い。

 カルソニックカンセイの森谷社長は、「計器類やボディー制御ECUなどで、通信データやソフトウエアの量がどんどん増えて、自動車メーカーが全体を見通すことが難しくなっている。企画を考えた後、設計や開発を部品メーカーに任せる流れになりつつある」と、自動車メーカーの開発姿勢の変化を読み解く(図1)。同社はそんな自動車メーカーの手中から“こぼれ落ちる”分野に狙いを定める。自動車メーカーに代わって開発し、日産以外の取引先を増やす。