深層学習を利用した制御技術が、自動車や各種のロボット、化学プラントなどに広がり始めた。来るべき大市場をにらんで、いくつもの日本企業が2018年以降に相次いで実用化する。使いこなしの「正解」が不明な未踏の領域だけに、各社はそれぞれ独自の工夫を凝らす。先行企業の取り組みを紹介する。
「誰も作っていないものを作る」「トップを取りに行く」─。深層学習を活用した制御技術の開発者からは、威勢のいい言葉が次々に飛び出す。目指す先に手付かずの巨大市場が広がるからだろう。人にしかできなかった作業を代替できる機械は、既存業界の秩序を揺さぶるばかりか、全く新しい産業を切り開く可能性もある。米NVIDIA社CEOのJensen Huang氏は、2017年12月の自社イベントで「自律動作マシン(Autonomous Machine)の市場は4000億米ドル」と言い放った注1)。
各社の意気込みには、本来日本が強い分野との自負もにじむ。自動車やロボット、建築機械といった製品で高いシェアを持つだけでなく、深層学習で何より重要な現場のデータを集めやすい立場にある。米Google社をはじめとする欧米のIT企業がどんなに優れたアルゴリズムを開発しても、データがなければ宝の持ち腐れである。自律動作マシンを深層学習の次の大舞台と見るNVIDIA社のHuang氏は、「日本の時代がやってきた」と持ち上げる注2)。
先行する各社は、手探りで開発を進めている。実世界で動作する機械の制御に深層学習を適用した前例はまずないからだ。とりわけ、期待を集める深層強化学習を使いこなすには工夫がいる。多くの企業が、人の動作を模倣させるなどして、ディープニューラルネットワーク(DNN)をある程度学習させた上で、試行錯誤による手法を適用するといった段階を踏んでいる(図1)。