日本は製造立国であり、製造業は我が国経済を支える中心的存在であることは言うまでもありません。ところが近年、日本の“ものづくり”の凋落が多く語られるところとなっています。
本当にそうでしょうか?
日本のものづくりは凋落したのか?
“ものづくり”は大きく「素材」「部品」「商品」に分けることができます。これを日本の輸出品総額(約70兆円)に置き換えると比率は1:1:2となります(図1)。日本の“ものづくり”を語るとき、我々も目にする機会が多い「商品」、すなわち家電やAV機器・モバイル機器などについて、日本製「商品」の凋落が取り沙汰されてはいますが、輸出額の約半分を占める「素材」「部品」において日本は世界でも高い競争力を保有しています。例えば、米Boeing社に最新旅客機の炭素繊維を供給する東レ、自動車の軽量化に欠かせない超ハイテン(高張力鋼板)材などは日本の鉄鋼メーカーの独壇場です。
特に日本が高い競争力を有するのが「部品」です。有名なところでいえば、米Apple社のiPhoneの電子部品のうち、50%が日本製だといわれています。またパナソニックは車載用部品で、ソニーもモバイル用画像センサーなど部品が好調なことにより業績を復活させました。
では、なぜ日本は「部品」が強いのか? それは日本の部品「加工技術」が世界一だからです。特に「微細加工」と言われる、近年のIoT(Internet of Things)に必要とされる高精密分野の加工において日本は世界一といえるでしょう。
例えば、高性能なスマートフォンを造るためには、組み込まれる電子部品の小型化が必須です。そうすると、今度はその小さな電子部品をハンドリングするためのノズルが必要となりますが、このノズルに開ける穴はより小さく、より長い穴である必要があります。想像してみれば容易に理解できることではありますが、穴が小さくなればなるほど長い穴を開けるのは困難です(図2)。
しかし、こうした困難に逆行する加工技術があるからこそ、日本はiPhoneの電子部品のうち50%ものシェアを握っているのです。