自動運転の実現で運転という“苦痛”から解放されれば、空いた時間をどう有効に使えるかを人々は考えるようになる。ドイツVolkswagen社が実施した消費者調査では、「遊ぶことと仕事、そして眠るという三つの期待が特に大きかった」(同社Group Research, Automated DrivingのHelge Neuner氏)という。

 走る快適な部屋―。2040年に向けて、自動車メーカー各社が思案を始めた。ある部品メーカーの技術担当マネージャーは「(車載機器を減らした)よりシンプルでより広い車内空間を実現したいという自動車メーカーからの要望が大きくなっている」と明かす。

 車内空間で今後、重要な役割を担うのがシートとHMI(ヒューマン・マシン・インタフェース)である(図1)。シートは人と触れ合う唯一の部品で、個人の体型や好みに合わせた座り心地を実現できるかが差異化のポイントになりそうだ。

図1 2040年の“走る快適な箱”で重要な三つのポイント
図1 2040年の“走る快適な箱”で重要な三つのポイント
自動運転技術の進化が進めば運転席やステアリングホイールは不要に。特にサービス用途の車両では車内で快適に過ごすため、シート設計や表示デバイス、音声認識などが重要になる。
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 HMIでは、情報の出口となる表示デバイスと、入り口となる音声認識が大きく進化する。シートの配置が状況に応じて多様に変化するとなると、固定した場所だけで使えるHMIでは役不足。2040年のクルマには、メーターやカー・ナビゲーション・システムのハードウエアは存在しないかもしれない。その役割は現在とは異なる“透明ディスプレー”や映像を空間に浮かべて表示する“ホログラム”に移る。スイッチ類など物理的なボタンはなくなり、クルマとの会話の中で乗員の要求をクルマに伝えればいい。会話から乗員の感情も読み取るようになり、気の利いた返答が期待できる。