全固体電池の研究開発の主軸は、それまでの高い性能の電解質材料の探索から、セルの試作や製造プロセスの開拓、あるいは充放電サイクル寿命の短さなどの課題の解決へと移り始めた。EVへの搭載を目前に実用化が意識され始めたわけだ。既存の材料をメニュー化して、“料理のレシピ”のように各種全固体電池を提案する例も出てきている。

 「全固体電池の開発の焦点は材料から、どんなセルをどのように作るかに移った」─。これまで30年以上、電池系の材料を研究してきた東京工業大学 大学院 総合理工学研究科 物質電子化学専攻 教授の菅野了次氏はそう語る。固体電解質材料自体の研究は続けながら、用途に応じて、正極材料や負極材料との適切な組み合わせを試す段階、しかも量産をにらんだ製造プロセスも開発する段階に入ったというわけだ。

 菅野氏の研究室では、60種類以上の全固体電池向け材料を「材料マップ」としてメニュー化し、企業への情報提供を始めているとする。単純に、イオン伝導率だけで競争する段階は終わり、「用途に応じた適材適所の選択を進めていく段階になった」(大阪府立大学 大学院工学部 教授の辰巳砂昌弘氏)という。