マツダ躍進のきっかけが、エンジンや車体などの技術群「SKYACTIV」の開発だ。2012年に全面採用した「CX-5」は、マツダの屋台骨になった。SKYACTIVの生みの親と言えるのが、初代「アテンザ」の主査だった金井誠太会長である。第2世代への意気込みと、異業種を含む激しい競争が始まった自動車業界でどう戦うのか聞いた。

―SKYACTIVは2019年から第2世代に入る。

写真:橋本真宏
写真:橋本真宏

 第1世代は、ほとんど予想通りに進んだ。2012年にSKYACTIVを全面的に採用した「CX-5」を量産したとき、私はガソリンエンジンで最低3年、ディーゼルエンジンには5年の優位性があると思っていた。変速機や4輪駆動機構にも大きな優位性があった。当時は不遜に思われるので対外的に言わなかったけれど。

 5年経って振り返ると、想定以上に優位に立つ時期が続いた。ガソリンエンジンは、今になって他社が近い水準に達した。ディーゼルはまだ優位性があると見ている。次の第2世代で再び大きくブーストをかけてアドバンテージを稼ぐ。

 第2世代の(超希薄燃焼を狙う)「SKYACTIV-X」に挑戦できるのは、第1世代で圧縮比14という高い壁に挑戦したからだ。達成したことで、これまで見えなかった課題がさらに見えるようになった。SKYACTIVを実用化するまでは、他社のお手本を見るようなところがあった。最近は随分減ってきたと感じる。自分で自分を進化させることができるようになってきた。

 自分達の現在位置を知る意味で、競合他社との比較はする。だがSKYACTIV-Xの技術開発となると、全く参考になるものがない。計測しては解析するという二つの技術を自ら作り上げるしかない。当社だけではできない。大学などの研究機関の力を借りている。部品メーカーにも多く教えてもらっている。

―SKYACTIVを実用化する前の2010年頃、電気自動車(EV)への期待が高まっていた。エンジンに力を注ぐマツダの戦略は“逆張り”に思われた。

 当時は2020年頃までの市場予測を見ていた。多くの機関の予測を見ながら間違いないと考えたのは、自動車産業は成長産業であること。そして90数%がエンジンの搭載車両になることだ。つまり、エンジン搭載車がどんどん増えるわけだ。

 何をすればいいのかは明らかで、エンジンに力を注ぐことは“順張り”。エンジンを一生懸命に開発して世界一になるほうが、収益とCO2排出量削減の両面で明らかに意味があった。同じ予測を他社も見たはずなのに、“逆張り”と言われたのは不思議だった。

 EVで世界一になったとしても、マツダグループ全員を養う利益を上げるのは無理だろう。(EVのように)いまだに数%の市場に乾坤一擲(けんこんいってき)の世界最先端の技術を入れていたら、当社は間違いなく危なかった。

 新しく自動車産業に参入する企業であれば、EVという選択肢はあり得る。